輸入車
更新日:2023.03.24 / 掲載日:2023.02.24

【メルセデス・EQ EQE】電動化時代のエグゼクティブカー

文●大音安弘 写真●澤田和久、内藤敬仁

 2022年9月、メルセデス・ベンツのEVシリーズ「メルセデスEQ」に初のセダンとなる「EQE」と「EQS」の2種類が加わった。これまでにも多くのEQ SUVが投入されてきたが、それらとの最大の違いはプラットフォームにある。SUVシリーズが、エンジン車と共有するのに対して、新たなセダンシリーズは、新開発のEV専用プラットフォームに。つまり、EVセダンの登場は、メルセデス新時代の幕開けを告げるものなのだ。

未来的でスポーティなフォルム

EQE 350+

 エンジン車のEクラス級となるミッドサイズセダン「EQE」は、そのスタイリングも独特のもの。特徴的なのは、EV専用構造を反映させた短い前後のオーバーハングとロングホイールベースとなること。フォーマルなEクラスと一線を画した未来的かつスポーティなフォルムに仕上げられている。

 最先端の演出でもあるが、空力特性を煮詰めた結果でもあり、新幹線などの高速鉄道のデザインとも印象が重なった。技術面では、抵抗を減らすだけでなく、風切り音などのノイズ低減対策もしっかりと行われており、静粛性の向上にも注力している。

 デザインの細部を見ていくと、フロントマスクはグリルレスとなり、ブラックパネルを装備。そのパネル面のパターンは、なんと小さなスリーポインテッドスターが描かれているのは、デザイナーの遊び心なのだろう。これがメルセデスAMGだと、パナメリカーナグリル風のデザインとなる。リヤスタイルには、流行りの一直線のテールランプを装備。ファストバック風のデザインとなるが、しっかりと独立したトランクを備える。その容量は、430Lと公表される。

EQE 350+

進化したMBUXを装備、ダッシュボード全体がスクリーンになる「MBUXハイパースクリーン」も用意

EQE 350+

 コクピットも未来的な空間が目指された。ダッシュボードがフロントマスク同様にブラックパネル化。その上に置かれたタブレット端末のように縦型タッチスクリーンが備わる。既にSクラスやCクラスにも採用される新たなMBUXシステムだが、イメージは大きく異なる。さらにメルセデスAMG車には、助手席用タッチスクリーンを加えたダッシュボードパネル全体に表示が可能となる「MBUXハイパースクリーン」も用意される。その雰囲気に圧倒されるが、操作方法は、通常のメルセデスと同様なので、ご安心を。後席は、ロングホイールベースとEV専用パッケージにより、足元スペースをEクラス級+αを確保している。

 試乗車となるのは、スタンダードな「EQE 350+」。後輪側にモーターを備えた後輪駆動車となる。350という名称が示すように、スタンダードといってもパワフルだ。最高出力は215kW(292ps)、最大トルク565Nmを発揮。駆動用バッテリーは90.6kWhと大容量で、航続距離も624km(WLTC)とロングドライブに対応する。充電機能は、6kWまでの200V普通充電と最大150kWまでの急速充電に対応。今後、普及が期待できる高出力タイプの急速充電時間での残量10%から30分充電した場合の参考充電量を紹介すると、90kW出力だと49%、150kW出力で57%まで充電量を回復することができるという。その駆動バッテリーの性能保証も手厚く、残容量70%を10年25万kmまでとしている。また給電機能にも対応しており、自宅でのソーラー発電からの充電や災害時などの非常用電源として活用することも可能だ。

まとめ

EQE 350+

 EQEのドライブは、とにかく静か。加減速のチューニングは、エンジン車に近いものに仕上げられており、Eクラスからの乗り換えにも違和感はないだろう。

 もちろん、565Nmという強力なトルクを備えるから、ワープのような加速も得意とする。そして、期待されるラグジュアリーミドルサルーンの役目もしっかりと自覚しており、エアサスによる快適な乗り心地も提供する。その大柄なボディから取り回し性に不安があったが、後輪駆動主体かつ後輪操舵機構も備えるため、動きは機敏で、想像よりも小回りも得意。それもそのはずで、最小回転半径は、Eクラスよりも小さい4.9mなのだ。だから、交差点の右左折もスムーズに行える。

 唯一、懸念されるのは、1905mmの全幅だ。ミディアムクラスセダンにしても、やや大きい。Eクラス級を選ぶ人の中には、オーナードライバーの扱いやすさを優先する人も多いだろうから、その点は懸念材料といえる。当面、EVセダンの主力と目される「EQE」。航続距離を含め、性能面ではオーナーの期待に十分応えられるだろうが、もう少し積載力では頑張って欲しい。ましてや、Eクラスでも多いステーションワゴンオーナーを振り向かせることはできない。電動化を推進するならば、早い段階で新たなメルセデス・ワゴンの形も見せて欲しい。

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大音安弘(おおと やすひろ)

ライタープロフィール

大音安弘(おおと やすひろ)

1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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